江戸川花火大会に寄せて
空に打ち上がる花火はとてもきれいだった.
一つ一つが空へ帰ろうと必死に飛び立ち,耐えきれなくなって散り散りになってしまう.
散り散りになる瞬間,耐えきれなくなる瞬間,弾けて光って消える.
円状に散開して,重力によって落ちていく光,その最後を見届けられないまま,次の花火が打ち上がる.
みんな見ていないけれど,僕だけは最後まで頑張って光っている君を見ているよ.
中心から離れて煙に消えそうな小さな誰にも見られない光.
君が光っていたことを僕はちゃんと見ていたよと伝えたい.
花火は人生だ.
皆何かに向かって打ち上がり,耐えきれなくなって散開する.その瞬間光って消える.
一番上に打ち上がった火の粉は,精一杯空へ手を伸ばすけれども,どんなに身体を燃やしても落ちていってしまう.
落ちていった花火を人はもう見向きもしない.
でも確かにそこにあった.
下で死んでしまった夢は確かにその瞬間だけは生きていた.
川に流れていく灰に,誰も目を合わせようとはしない.
僕もきっと火の粉の一つだ.
誰かに見てほしくて光ってるわけじゃない.僕は僕を輝かせるために必死なんだ.
空に手を伸ばして,必死に伸ばして,何かにつかまろうとして.
それでも一つ残らず空へ伸びていく光はとても美しかった.