夏に思い出が一つもない
ペンギン・ハイウェイを改めて観て,色々感想を読み漁って,結論僕に夏の思い出が無いことが,この作品に感動できない理由であるという結論に至った.
なんて悲しい事実なんだ.
【全く夏がピンとこない】
気になっている子がいて,その子と夏祭りに行った思い出がない.
よくある花火大会のシーン,好きな子の浴衣姿を見て,かわいいのに「かわいいね」と言えなくて切なくなることなんてなかったし,これからもなさそうである.
花火は空で光っているだけなので星と変わらないし,花火大会に群がり酒を飲みぐちゃぐちゃやっている人たちが心底嫌いだし,そこに思い出はないし,とても煙いし家のほうが良い.
確かに友達と市民プールに行って,その帰りに買った17アイスが美味しかった.あれは美味しかった.でもそれはいつ食べても美味しい.
それよりも,プールの中で浮いている他人の鼻水であったり,若干黄ばんだエリアであったり,体を洗わないお年寄りであったり,プールはとても汚いものであった.塩素濃度を確かめるために,一時外に出される時間が死ぬほど嫌いで,5人位で行ったときは一人余ってしまっていたな.
大学生の時に,友人3人と伊豆まで海を見に行こうとしたことがあった.が計画不足で熱海になり,素泊まりの予定で宿もなく,仕方なく終電で帰った覚えがある.その時夜の海を見ながら酒を飲んだが,僕の人生を感動させるほどではなかった(みんなごめんだけど).
それよりも,スペインで見たガウディ建築のほうが感動して今でも感動できる.
梅雨の時期に,傘を刺して長靴をびしゃびしゃやりながら,好きな子を思い出ことなんてなかった.雨で思い出すのは,サッカーからの帰り道土砂降りの中自転車で全速力で帰ったことと,その帰り道にファミマによってデカ盛りもやしラーメンをサッカー仲間と食べることだ.
僕の人生にお姉さんという存在は一度も存在せず,この先も存在しないまま僕は死ぬことになるだろうと思うし,そのことについて全く悲観的ではない.
ただ,僕の尊敬し仲の良い人達は,意外と夏に対して思うことがあり,夏に生きていたのだと知って,やっぱり僕とは違うところにいるんだと知ってしまい,そのことについて悲しく感じた.
夏のジメジメとかに対して,僕は「ジメジメしているから乾燥してほしいな」ということしか頭に思い浮かばないのだ.
夏に記憶が連動していないのだ.
僕には,夏に思い出が一つもない.
夏はただの気温が高い時期で,ただの気温が高いだけの時期に結びつき思い出がないのだ.風鈴が揺れて,縁側に座りうちわで仰ぎながらめまいがするほどの青い空を見上げ,おばあちゃんが育てたトマトをかじり,明後日行く夏祭りに思いを馳せることなんてなかった.太鼓の音を聞いて,「太鼓を叩きたい!」と思ってしまう人間なんだ,僕は.