時計の秒針音

少しずつコツコツ意味を貯めてく

夏の記憶を呼び覚ましている

「夏」という季節について考える.

 

蝉の鳴き声,市民プール,棒付きアイス,かき氷,焼きそばの屋台,盆踊り,花火,熱中症,グランド,炎天下,紫外線,林間学校,虫捕り,緑に生い茂る木々,バーベキュー,自転車,通り雨,線香花火,無計画旅行,ガストで徹夜,海,海パン,潮風,パキパキの髪の毛,海藻,砂浜,カタツムリ,あじさい,濡れた道路,長靴,雨傘,アマガエル,うちわ,扇風機,冷房,氷,体育祭,

 

夏に関しての記憶が乏しい,全て過去の記憶.みんながよく書いている夏の詩のような言葉が出てこない.

僕に夏は無いみたいだ.

 

必死で呼び起こしても,全て嘘になってしまう.

暑い夏も,雨に濡れた梅雨も,カタツムリを触っていたあの日も,サッカーの帰りに土砂降りが降ってびしょ濡れになりながら帰ったあの日も,その時話した会話も,全て記憶の奥底に閉じ込めてしまったようだ.

定期的にこじ開けないと,この扉は固くて開かない.夏の想い出を呼び覚ましている.

 

 

「あの日,僕は君に一つの嘘をついた.つまらない嘘だ.僕の背中を追いかけてほしかったんだ.ただそれだけだった.持っていた傘を放り投げ,靴をびしゃびしゃに汚しながら,それでも手を引いてほしかった.それが言えなかった僕は,未だにあの日に戻っていつも過呼吸になってしまう.苦しさを紛らわせるための笑顔が板について,僕の顔面は仮面のように固く動かなくなった.小さな虫が耳元で飛んでいるのを無視して,僕は君と逆方向に歩き出した.傘が妙に重く感じるが,気の所為だ,と自分に言い聞かせた.」