書き残し1
喧騒
ここで君を待つ
いくら好みの音楽を聴いていても
世界は僕が僕の世界に埋没することを許しはしない
雑踏のざわめく音がひっきりなしに耳に入ってくる
カナル式イヤホンが意味をなさない
何もかもが憎い日がある
本当に何もかもが憎い日がある
全てを壊してやりたいと同時に全てと触れ合っていたいという感情が(どこからあふれてくるのかはさっぱりわからないが)湯水のように溢れてくる
今まで好きだった世界は途端に僕に牙を剥くようになり
僕はイヤホンを付けて自分の世界に逃げ込むのだけれど
世界はそれを許しはしない
世界はあまりにうるさすぎる
誰かを他の人より好きだったらそれが愛で
他の人より嫌いだったらそれは憎で
全ては相対的に決まっている
自分の絶対的な価値観はもはや存在しなくて
相対的だからこそそれの入れ替わりは激しい
「君のことを(相対的に)愛している」
誰も君自身のことを見てはいない
自己のアイデンティティは個では形成されない
自分とは他人と触れ合うことで形成される
他人との差異を見つけて初めて自分がこの世界に存在することを知る
自分を探すために人を見るのが一番手っ取り早い
「俺はあいつよりすごい」
他人と比べることでしか価値を見出だせない
博愛主義の名の下で全ての人を愛してみたい
平等に愛することは同時に誰も愛していないことで
誰も愛していない僕は世界に取り残された存在みたいで
そんな瞬間だけが自由だって知った
誰も愛していないからみんな愛している
腐った口臭を撒き散らす疲れた人々と同じ椅子に座って
今日も汚れた空気を肺に入れて
世界と少しずつ同化していって
完全に同化した時がきっと死ぬときなんだって気づいた
今日が地球最後の日だったら僕は何をしただろう
イヤホンから垂れ流れてくる音楽が意味をなさない