腕時計をしよう
僕は好んで腕時計をしている.しかも,少し重めのものが好きだ.
もうかなり長いあいだ腕時計をしている.
僕の体は,もうすでに重心が若干右にずれている.
それは腕時計を普段つけているから,左の重みと釣り合わせるために右に重心がずれているのである.
この偏りこそが僕である.
長い年月をかけて,この偏りが僕となった.
美しい傾斜.
もう腕時計は,身体の一部になっている.
こうやって,僕は身体以外のものが少しずつ身体になってきてしまっているのだ.
もうギターもそうだ.
僕はいつの間にか,多くのものを背負っているようだ.
この重さや痛み,傷が自分を形作っている.
すべて記憶らしい.
傷口を見て,記憶が鮮明によみがえる.
人は記憶の塊なのかもしれないね.
あの日の僕の影を,いつまでも追いかけてしまっているのかもしれない.