夕方の電車の窓から見える景色が好きだ
電車の窓から見える景色が好きだ。特に、夕方の電車が好きだ。
電車の中では、この景色を見ないでみんなスマホをいじっている。画面にとらわれて毎日ある、毎日違う世界を見ないなんて本当にもったいない。でも、だからこそみんなスマホを見ておけと思う。自分だけふと目線を上げてこの景色を見ているとき(そして、ほかの人がみんな画面にくぎ付けになっているとき)、この世界がその瞬間だけ自分だけのものになったかのように錯覚する。
電車は動いていて、人はその中で荷物のように運ばれていくけれど、遠い空はそんなことお構いなしに光っていることが好きだ。
見えている世界はもちろんひろいはずなのに、電車の窓からのぞく、その世界は本当に無限にあるように思って、「ああ、生きているんだな」と思う。
体中が呼吸した感じになる。太陽だけは変わらず美しい。
夕方は、ちょっとだけ寂しい気持ちになる。もう少しで消えてしまうっていう太陽の気持ちが伝染したのだろうか。この、いなくなる瞬間の輝きは花に似ている。
100年も生きられない身体で、一日一日同じ日なんて無いのだから、そういったところに目を向けると、小さなところに美しさは宿っていたりする。
でも、カメラで撮ってしまうと、その時の感情は失われてしまうからとても悲しい。