時計の秒針音

少しずつコツコツ意味を貯めてく

「パパ」ー岡部えつ 雑感

インターネットが普及し,ツイッターが普及して,ものすごい情報量の文字列を短時間で消費するようになってから,僕は活字が読みにくくなってしまった気がして,僕は定期的に小説を読むのです.

236ページの分量なので,読むのが遅い僕でも3時間程度で読むことができた.

 

パパ

パパ

 

 

圧倒的な盛り上がりがあるわけでもなく,静かに静かに,じわじわと世界が広がっていき,この物語の真相にたどり着く.確信に迫るまで時間がものすごくかかるが,テンポ感がよく,苦にならず読み進めることができた.助かった.僕はまだ本が読める.

 

奈子とミンミという二人の女性の奇妙な二人暮らしから物語はスタートし,それぞれ交わることのなかった人生が交錯していく.

 

一言でまとめれば親の愛を得ることができなかった二人の主人公の,欠乏したものを探す旅だ.

大変静かな物語なので,そういう物語が好きな方は読んでみても良いと思う.短いし.

(レビューも短い.なぜなら心が動かなかったから)

月花の旋律ツアー 皮切りライブ at 下北沢LIVEHOLIC

お久しぶりです.

 

最近文章を書くことがとても億劫になっていて(というのも,レコーディングやら企画の準備やら何やらカニやらでとてもしっかり時間を作ることができなかった)遠ざかっていたのですが,昨日のライブに関しては色々思うことがあり,これは文章に残しておく必要があると思った.

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TOURフライヤー

 

 

昨日の対バン

 

・manent

・ボールプール

・kiririto

 

の4マンで,各バンドの持ち時間を通常のブッキングライブよりちょっと多い時間に設定した.

ご出演していただいた各バンドのみなさん.本当にありがとうございました.

僕はとても幸せだった.打ち上げまで楽しかったし,色んな話ができたし幸せな時間だった.

 

話は戻るけれど,なぜ長尺にしたのかというと,ノクターンが30分の尺だと自分たちの表現したい音楽ができないから,もう少し長いロングステージにしたいという希望からだった.

 

30分って短くない?

僕らの曲,比較的長い曲が多いんだけれど(特に私の聖域なんて6分30秒くらいある),多分聞いてもそんなに長い印象ないんじゃないかなと思う.少しからくりがあるんだけれど,それは書きませんが.

 

6分半の曲だったら,4曲やってSE入れたら終わり,これは本当に一瞬.

 

だから今回もう少し膨らみをもたせて,色んな曲ができるようなセットリストにした.

ーset listー

夜の海岸、星の欠片を拾う少女

eclettica

ステューカ

透過する光

音楽室

twilight

私の聖域

en 水源

 

 

(内野くんいつも格好良い写真ありがとう,今後とも本当によろしく.)

 

一応新譜を出したあとの企画だったから,新譜の流れに沿ったセットリストにした.いつも聴いてくれてる人だったらより楽しめたんじゃないかなって思う.

 

最初の3曲は,ノクターンの中でもかなり軽い曲を並べた.ライトな感じで聞きやすい.

残り4曲で一気に中心に向かっていく感じ.

これって,ライブ来てくれた人は感じれるのかな.

僕はノクターンのライブを自分で見てみたい.

 

最後に中心に潜って潜って潜って深層に辿り着いていく.その感じがライブで伝わったなら,僕らの昨日のセットリストは正しかった.

 

去年ちょっとあってバチっちゃったヒヲエルのジュンヤ君ともちゃんと話せてとても良かった.バンドを続けることが最優先だもんね,僕もジュンヤ君の立場だったらどうしてたかわかんないや.わだかまりが溶けてよかった,今後共よろしく.

 

外打ち出てくれたボールプールの眠り棒さんとアオさん.僕は普通にボールプールのファンなので,飲み会でいろいろ話せてとても楽しかった.お二人はとてもバランスがいいなと見ていて感じました.また一緒になにか楽しいことしましょう!とりあえず2月24日楽しみです.

 

そして,今中さん.2月を最後ににLIVEHOLICをやめられるということで,僕は本当にいろいろお世話になったから感謝しかないです.直接も言ったしLINEでも書いたけれど,ノクターンを見つけて下北沢に初めて呼んでくれたのが今中さんでよかった.そこから世界がパッと開けて一気に道が伸びて今に至っていると思ってます.この恩は売れることでお返しになると思っているので絶対売れます.

昨日言われたとおり,この界隈を引っ張っていきます.その責任背負います.責任背負うと僕は強いんです.やったります.(これ今中さん読んでるかわかんないけど 笑)

 

そして,昨日来てくれたみなさん,本当にありがとう.もうほんとにありがとうしか出てこなくて,ボキャ貧でごめんなさい.こうやって良いと思ってくれて,音楽を聞いてくれて,声をかけてくれて,「良かったです」って言ってくれて,いつもなんて言って良いのかわからんのです.ありがとうしか出ないんです.すみません.

みなさんのことは,本当にいつまでも覚えているし,これからも仲良くしたいんです.いつも支えられてます.

みなさんにもいつか恩返し絶対するから,それまで待っててほしいです.まだ時間かかるかもだけど.

(あとね,ライブに来たくても来られなかった皆さん,大丈夫です.気持ちだけでも僕らは本当に嬉しい.僕らはまだまだライブをやるから,無理しないでまた来てね.待ってるよ)

 

そして,ドラムのねねちゃん.昨日僕の演奏の調子が良くない時に,不安なはずなのにしっかり見守ってくれてありがとう.その御蔭でちゃんと持ち直すことができた.さすがノクターンのドラムです.信じていてよかった.これからも信じさせてください.

 

来週は京都にいます.ノクターン関西初上陸.

ノクターンみたいなバンドって多分いないと思うんだ〜,だから絶対何か巻き起こしていく.

京都GATTACAさん,よろしくおねがいします.

新年のご挨拶・決意表明

2019年あけましておめでとうございます.

2018年は激動の1年でした.今年はどうなるのでしょうか.

僕は皆さんのおかげで,芸術家として生き続けることができ,今日を迎えることができました.

 

2019年はもっと自分,バンドというものを色濃くするために,深く深く潜っていくことにしようと思っています.

一つ一つの楽曲をもう一度自分の中で咀嚼し,また新しい音楽も自分の中で改めて噛み砕いて「何の音楽なのか」ということを理解していこうとおもいます.

 

「あまりに不安定であったが,それが作る者の本質である」

 

今年から僕は,僕のありあまる才能とひらめきを信じ抜きます.なので,僕の作り出すものを否定する人には,「この人は僕の価値がわからないんだな」と感じます.(もちろん必要なことは十分に取り入れます.拒絶することとは異なることを理解して下さい.)

でないと,僕が作るものを「よい」と言ってくださる方に面目が立たないからです.

そのかわり,僕らのことを良いと言ってくれる方のことを全力で愛し,大切にします.

当たり前のことですが,僕はこれを敢えて言葉にします.

なので,ノクターンを信じてついてきてほしい.君らの愛を全力で受け止めて,絶対に離さないから. 

 

2019年頼むぞ,僕は全力で立ち向かうから,どうか背中を押してくれ.

 

僕はポルノグラフティの「アゲハ蝶」の世界にずっと囚われている.

先日,三秋縋さんのツイートでこんなのがあった.

 「二度と戻れない、決して触れられない、初めから存在しない、だからこそ永遠の輝きを放つ青空のむこうの少年少女」に焦がれる人々

非常に滑稽だが,「僕のことだ」と思った.正確には僕もこの人々に一人なのか,と気づいた.

僕は,詩を書く時,多くの場合少年と少女を題材にしいている.

無垢で汚れのない少女と,それを見守り追いつこうとする少年.この少年は,実は僕の理想だったりする.

自分の中にある汚れた部分は全て取り払って脱ぎ捨て,残ったところだけ,純粋な部分だけをろ過した存在でいたい.

 

小学1年生の頃,毎月課題曲が決まり,朝の会などで歌わされた.その時にポルノグラフティのアゲハ蝶と出会った.僕とJPOPの邂逅のときでもある.

 


ポルノグラフィティ アゲハ蝶

 

「ひらりひらりと舞い遊ぶように姿見せたアゲハ蝶

夏の夜の真ん中月の下

喜びとしてのイエロウ

憂いを帯びたブルーに

夜の果てに似ている漆黒の羽」

 

僕は虫が嫌いだ,だけれど,この歌に見えるアゲハ蝶は世界で一番美しいと思ったし,

そこには女性的な雰囲気もあると思った.

 

(なぜかこの曲だけ,高学年が発表会の時に劇のような物をやっていた気がする.

青いビニールシートをオアシスにたとえて,たくさんのアゲハ蝶が舞うといった劇だったような.)

 

「あなたが望むのならこの身などいつでも差し出していい

降り注ぐ火の粉の盾になろう

ただそこに一握り残った僕の想いを掬い上げて心の隅において」

 

僕はこの世界から抜け出せなくなってしまった.

 

 

非現実に心を奪われてから,もう18年くらい経つなと思った.決して無いその世界にしか希望を見いだせず,僕には作り出すことしかできない.

心に穴が常に空いていて,それを埋めるために必死に言葉を吐き出すんだけれど,穴に吸い込まれるだけで穴が埋まることがない.その穴が三秋さんが言っていた永遠の輝きなんじゃないかと認識している.

 

青春の煌きか,輝きかはわからないけれど,そこに理想の世界線を作り出して,どうしても手を伸ばそうとしてしまう.決して届かないのに.どうにかその理想の世界にたどり着きたいと思ってしまい,一人で自転車を漕いでいる夜にオリオン座に手を伸ばしてしまったり,電車の中でメタ的な思考をとったりしてしまう.笑っちゃうよね.

電車線路に飛び降りる瞬間は,誰からの視線も受けるので世界の中心にいる気分になるし,その瞬間だけは映画のようなドラマのような感覚になるんじゃないかなとずっと思っている.物語の主人公になるため.

 

小学生の時から現実と非現実というのが明確に区別されていて,非現実の世界を理想と名前をつけて生きたいと切に願っていまに至る.どうにか音楽という表現の場を持つことができたから,音楽をしているときだけはその世界に足を踏み入れられている気がするし,その世界の少年少女に触れられている,いや自分がその少年少女になっているとさえ思って越に浸っている.

 

広大な砂漠の中で,金色の日が後ろから差し込んで,振り向きざまの少女は,非常に美しい顔をしていて,笑顔が素敵なんだ.その笑顔を見てしまうと僕は泣いてしまうんだ.そっと頬に手を触れようとして目が覚めてしまう.

 

僕はアゲハ蝶の世界に囚われてしまっている.

11/19 初ワンマン 「まだ信じたいよ。僕らは、」

2ピースになった決意表明が6月で,8月にレコ発企画「誰かが愛した呼吸」,そして11月19日にレコ発ワンマンライブ「まだ信じたいよ。僕らは、」.

正直過密スケジュールだった.

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確か4月くらいにもうこの流れは決まっていた.

2ピース決意表明企画

レコ発企画

ワンマン

 

2018年は活動の年にすると決め,がむしゃらに頑張ったつもりだ.周りから見たらどうだっただろうか.

ライブやりすぎだったような気もする.

 

レコ発ワンマンになったのは急な話で,9月頃だったような気がする.

 

5月でした.

あ,そうか,5月にワンマンは決まって,曲をレコーディングして音源にしようとしたのは9月とかそのあたりだ.

mini albumのレコ発って決まったときから,アルバム名を「文字盤並びの人々」にするって断言した.EPとアルバムで名前の付け方に一つの一貫性をもたせている.明言はしないけど,多分すぐ気づくだろう.

 

このアルバムのできた曲順としては,夜の海岸が一番最初だった.もともと6月の企画「再考」のアンコールでやっった曲だから.この企画に来てくれた人は歌詞カード持ってるよね?捨ててないよね?笑

よかったら,このアルバムと一緒にしておくといいかもしれないね.

 

そしてステューカができた.なぜだかわからないけれど,どうしても爆撃機の曲が作りたかった.爆撃機が空から落ちてくるのと,女の子が僕には重なった.ツイキャスでも話した通りだけれど,この機体は,落ちてくる時に風を切る音がラッパの音に聞こえたらしい.その音で人々はその存在に気づきサイレンを鳴らし逃げ,隠れた.

僕と君はそのサイレンを通してでしか出会うことができない.

 

透過する光は,もともと「光源」という曲にするつもりでずっと作っていた.ただ,納得できるリフやサビ,メロディが思いつかず,苦戦していた.とりあえずの曲をねねちゃんとスタジオに入った時に何回か合わせたけど,しっくり来なくてお蔵入りにしていた.

 

その間にecletticaのリフが同時進行で完成した.確かTwitterで動画を上げた.

この曲はどうしても「ティカ」を入れたくて,色々と単語をあさっていたな.

(ちなみに間奏はレコーディング前日に決まったので,若干録り直ししていたりする...)

 

光源という曲名を一旦据え置いて,もう一度詩を見直した時に,光を見ているのは瞳だと思い出した.全ては反射していて,その反射によって物体を知覚している.ただ,透明な,例えばガラスを見る時,光は透過してしまい,見ているはずなのに見えていない状態になる.

僕の考え方の大前提に,「人は決して分かり合えない,理解し合えない」というものがある.なのに人はよく「わかる.それってこうだよね」とか言う.

結局僕は透明なままで,その透明な僕を通した世界を見て,知った気がしているだけだと気づいた.

そういう曲です.

イントロの変拍子リフは,様々に屈折する光を表していたりします.裏話.

 

Wonder fallは一瞬でできた曲で,ファズを変えたのを気にちょっと使いたくて作った曲です.

ただ,あのコード進行はとても気に入っています.メロディもわかりやすくできたと思うし,このアルバムの中で一番わかりやすく作れたと思う.

ステューカとWonder fallは僕の中ではセットで,切っても切り離せない関係なんです.だからワンマンでも離せなかった.

 

文字盤並びの人々の最後の掛け合いは,少し面白がって作った.

ちょっと遊びがあった方が絶対楽しいし,掛け合いが繰り返しの意味を含んでいたり,まああんまり全部解説すると面白くなくなっちゃうからこの辺でやめにしよう.

 

Aprilは以前のミニアルバムのリメイクだけれど,がらっと変えた.

 

レコーディングが終わって,ジャケット等のデザインをしながらのワンマンの練習は,楽しかったけれど過酷だった.

ワンマンは4部構成にして,ノクターンというバンドを0から100まで表す必要があった.通常のブッキングだと,その一瞬で表すしかないから,ピックアップした曲で印象つけるしかない.

ただ,僕らが作る曲はecletticaや雨傘と天気雨のような曲もあったり,救命するグレートヒェンみたいな曲もあったり,幅が広い.

そのため,部に分けてやる必要があった.

 

1部は導入.いわゆるノクターンとは,というのをコンセプトにセトリを組んだ.

機織り機の「さあ,今から」には色々な意味が込められている.

 

2部はアコースティックで,もっと来ていただいた方との距離を縮めたいっていう願いから組んだ.

あとちょっとポップな遊びもできるよっていうのを知ってほしかった.

 

3部は深み.暗い曲ばかりではなく,ちょっと明るかったり歌もの色が強い曲を入れた.

一緒に歌えたりすることは,一緒に生きていけることだと思っている.決してあなた達を突き放さないよ,という意味が込められていたりする.一緒に生きていこうね.

 

4部は深層心理.脳内であったり心であったり,人は決してわかり合うことができないということを,ただまとめ上げた.笑っていても,違うことで笑っているし,話したことは半分も伝わっていない.でもそれは仕方のないことだ.それが僕らであり,それを踏まえてみんな生きている.苦しかったり悲しかったり,そういう傷を持ちながら,自分の心に嘘をついて笑ったり,本当に不器用だなって思う.

だからこそ,そういう人たちと一緒に生きていくことができるとも思う.

雑踏に消えかけた君の輪郭を僕は愛しているし,不器用でも生きている君は美しい.

そして,僕の心もあなたの心も,誰も踏みにじることは決してできない,大切な聖域であり,僕らはそれを守る義務がある.

 

僕は人が嫌いだけれど,人が好きだ.

まだ信じたいんだ。僕は、

ミュウツーの逆襲でふいに泣いてしまった

妹がポケモンの初代映画「ミュウツーの逆襲」を見ていて,ふらっとテレビを覗いた手前引き込まれてしまって,そのまま最後まで見てしまったんだけれど,

あれは時代を先取りしすぎていたなと,まず思った.

科学が発展し,iPS細胞などが出てきて,「生物(クローン)を作り出す」ということが現実になってきたのはここ最近の出来事なのに,この映画が公開されたのは1998年7月18日である.20年前だ...

 

この映画の主題は「自分というものの存在意義・自分を生み出した人間への復習」

劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲 - Wikipedia

 

小さな頃は,なんとなく不安で怖い印象があったけれど,今見たときは全く別の印象を受けた.多くの人が名作と言う理由がわかった.

ミュウツーの逆襲,逆襲の相手は,自分を作った人間に対してだと思っていたけれど,本当はオリジナルに対してだったのかな.オリジナルを殺すことでオリジナルになりたい,オリジナルは自分で作られたとは思っていないけれど.

 

本物になりたいミュウツーたち,作られたものは,本物を殺さないと本物になれないと思っている.

 

みんな,本物なのに,偽物だって思ってしまう,作られてしまったから

 

オリジナルは自然に生まれ,コピーは人工に作られた.

 

でも生きている以上,みんなオリジナルだ.

ミュウツーたちはそれを頭のどこかでわかっていながらも,”作られた”ということが劣等感として残ってしまい,どうにか自分の存在を認めさせようとする.

「我々コピーはオリジナルを超えるように作られている」

「本物は本物だ。技を使わず力で戦えば、本物はコピーに負けない。」

ミュウツーとミュウの会話だが,自分をコピーだと認識しているミュウツーの悲しさがあまりに辛い.そして相手を思いやることを全くしないミュウ.

 

ミュウツーはミュウに自分の存在を認めてほしかったんだろう.私も生きている,もとはあなただが今は別の存在としているんだよ,と.

 

オリジナルとコピーで戦うとき,コピーのピカチュウがサトシのピカチュウにビンタするシーンで,サトシのピカチュウは一回もやり返さず叩かれ続ける.コピーピカチュウは,叩きながら泣いてしまう所が苦しい.

本当はこんなことは無意味であるとわかっているのに,倒さないと自分がなくなってしまうという使命感が,あの行動を引き起こさせていたんではないかなと思った.

 

最期はミュウツーのエゴだったな.

 

記憶を消してあげたのは,優しさだ.

けれど,消したのはオリジナルだけで,コピーの記憶は残ったままだろう.

それは戒めなのか.

ミュウツーたちコピーと一緒に,ミュウはなんでついていったんだろう.

ただの興味本位なのか,それとも.

 

今この世界にオリジナルはどれだけいるんだろうか.

みんな誰かのコピーじゃないだろうか.

コピーだと知りながら,僕らはオリジナルのように振る舞っているのかな.

僕の言葉は誰かの受け売りで,バカにしてくる君は,きっと誰かに言われたんだろう.

僕は僕になりたい,僕でいたい.

 

 

 

ふるさとを持たない君の海になりたい

俵万智さんの俳句だ.

 

僕はこの言葉をつい最近知った.死ぬ前に知ってよかったと思っている.

 

「ふるさと」を持たない君

僕の知っているふるさとにたとえ海がなかったとしても

この言葉の中では,僕のふるさとには海があって

出会った君は知らないんだ,あの青さや美しさを

 

太陽の日差しを優しく照り返して

まるで宝石を散りばめたかのような青い海に

少し肌寒い風が吹いて

ふと潮の匂いに懐かしさを感じる.

 

近くでは地元の漁師が釣りをしていて,

「おーい,今日も生きのいい魚が釣れたぞ,見ていくか」と

僕に話しかけてくる.

 

日常の大部分にその海はあって,

海と共に過ごした.

 

僕は時間とともにその海にお別れをし,

鉄が連なる都会で君と出会った.

 

君は知らない,あの青さを.

だから,僕がなりたいんだ,君の青に.

それが,たとえ本物ではなくとも良いんだ.

君が僕越しに海を見てくれればそれで良いんだ.

 

僕を通して見た景色が,

どうか美しい青であってほしいと心から願う.

 

あんなに美しいんだ.君にも知ってほしい.

僕はあの街で育ったんだ.

秋には金木犀の香りがして,時間の流れがゆっくりなんだ.

こんな鉄に囲まれた世界が全てじゃないんだよ.

 

そうだ,今度電車に乗って遠くに行こうよ.