万引き家族を観てきた
万引き家族を観てきた.
他の映画を観に行った際のCMで見かけて,絶対観に行こうと思っていたので間に合って良かった.
一つの映画を作る人は,物語を作って,配役を決めて,カットを撮って,音楽を決めて,と一つの新しい世界を作り上げるから,本当にすごいと思う.
そこには確実にもう一つの世界がある.間違いない.
僕は普段から割と映画を観に行く.
映画の中で,詰めが甘い部分とか,無理矢理の辻褄合わせとかを見るととても残念な気持ちになってしまうし,なら作品作らなければ良いじゃないかと思ってしまう.(SPECとかひどかった,あれはドラマシーズンで抑えるべきだった).
「万引き家族」は,そういう矛盾が一切なく,登場人物一人ひとりの思考とかバックグラウンドがそれぞれ確立していたと思う.観終わったあとに,とてもすっきりとした印象を覚えた.
わずか2時間ちょっとだが,もっと長い時間を観ていた気もする.
一人ひとりの背景がしっかり決まっているからこそ,それぞれの人物がそれぞれの意志を持って動き映画になる.そこには辻褄合わせなんて存在しない.
漫画とかもそうで,キャラクターにもそれぞれ様々な背景があるわけで,それが決まっていないとぼやけてしまう.
久しぶりにしっかりとした映画を観れた.あと,出演している俳優みんな演技上手くて最高だった.
リリー・フランキー,結構な年なのにものすごく格好良いし,安藤サクラめっちゃ下町の女性感があってリアル過ぎた.娘役の佐々木みゆちゃんは,あの年齢なのに本当に切ない感情で演技していて天才かと思った.
”家族を超えた絆”って書いてあるけど,僕はそうは思わない.彼らは結局は家族を超えることはできなかった.
それぞれがそれぞれの秘密を抱えて,でもその秘密をお互い知らない.
彼らがやっていたことはおままごとだったのだ.でもそのおままごとの一部を切り取ると,確かにそこには家族が存在していた.
なんて悲しいだろう.
彼らは世界から置き去りにされてしまった,誰のものでもないものを,ひっそりと万引きする.
新しい名前を得ることで,彼らは自分自身から,事実から逃げることができた.新しく生まれ変わった人たちが,集まって家族になることができた.
ただ,存在するのは偽りの名前であり,だからこそ本物の家族にはなれなかった.
家族ってなんだろう.血がつながっていることか,時間を共有していることか.
anoneの世界では,バラバラの人たちが間違いなく家族になっていたなぁ.
あれは現実じゃなくて理想なのかな.
万引き家族は,結局家族になる覚悟ができていなかった.
だから逃げてしまった.家族を置いて.
彼らは家族から逃げてしまった.その瞬間おままごとになってしまった.
知らない間に人は大人になっていて,役割を課される.
そんな準備なんてしてこなかったのに.
悲しいね,僕らはずっと子供だったのに,子供に子供ができてしまって仕方なく大人になるんだね.
逃げて隠して,僕らは愚か者だね.
いつかまた会えるなんて嘘だね.
もう二度と会えないよ僕ら.
それでも「またね」って言ってしまうんだね.
少しの希望を残したいから.