時計の秒針音

少しずつコツコツ意味を貯めてく

さよならの朝に約束の花をかざろう

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ぎりぎりになって観ることができたので,自分の記録のためにもここに残しておきたい.

 

僕はこの映画を観始めた時,「永遠」がテーマであると思っていた.

長寿の一族である主人公と人の子が,出会い死ぬまでの話で,「永遠の命を多くの人は望むけれど,それは決して良いものではなく,異なる者同士が出会ってしまったら哀しみしか生まない」ということを伝えたいのかなと思っていた.

人の赤子を拾った主人公は,母として共に生活していき,いつか人の子が母の時間を通り過ぎてしまう.主人公は永遠を前に無力で,愛するものは歳を取っていき死ぬ.

冒頭で「外の世界に出たら,誰も愛しては行けないよ.本当の一人になってしまうからね」という長の言葉があった.

それは,長も昔人間の世界に足を踏み入れ,人間と愛し合い,そして愛して人が死ぬのを見届けたことがあったからだろう.

決して混じり合えない種族の隔たりがそこにはある.

 

(ただ,主人公の声があまりに甘ったるくて,感情移入が難しかった.

また,幼少期の人間の子の棒読み感も観てて辛くなってしまった.

それがもっと良ければ最高の映画だったな)

 

風景もとても美しく,音楽も最高だった.音楽はサントラまで購入した.エンディングの曲が特に好きで,ボーカルの方がrionosさんという方だった.

 

twitter.com

 

 

歴史を織り込む機織りの一族というのも,今までに無い新しさがあった.

人が生まれてから死ぬまで,それを1人の年を(ほぼ)取らない母が看取っていくということ,を伝えたかったらしい.レビューを見て知った.

 

人の子が主人公の手から離れ,人と愛し合い家族を作るところがあり,それと戦争シーンが同時進行していたので,僕はてっきり,またその母親が戦争で死に,子供を主人公が拾い育て,歴史は無限に繰り返す,ということを表現したいのかなと見ながら思っていたから,そこは予想を裏切られ意表を突かれた.

 

もう一回しっかり観たい映画だ.まだまだ自分の中で浅い部分が多く,とにかく忘れないうちに残しておこうと思った次第.

 

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この作品を受けてできた音楽がノクターンの「機織り機」という曲だ.

 

music.apple.com

 

なぜ轟音を選んだのかだったり,映画を観たあとだったらさらによくわかるかもしれない.聴いてみてくれると嬉しいな.

 

 

 2019/9/22追記ーーー

僕のTLで話題になったので思い返してみた.

自分に子供ができたとして,その子が天寿を全うし死ぬまでをみることができる親はどれだけいるんだろう,と今ふと思った.普通だったら親が子を看取ることはできない.

 

エリアルという少年が異性を意識しだしたタイミングの,心の葛藤が辛かったのを映画を観ていた時に感じたのを思い出した.なぜレビュー当初に書かなかったのか.

親にしては幼い容姿であるマキアを,最初は親だと思うが,徐々に容姿が自分と近くなり異性として意識しだしてしまうところがかなりリアルだった.普通であれば親は自分の成長とともに年老いていくが,それがない.同世代の異性なのに親という矛盾がエリアルを苦しめていた.その心情描写がかなり細かく描かれていたと思う.

そして,自立し自身の家庭をもつエリアルは,最後人間として天寿を全うし死ぬ.

この生命の流れを見ることができたマキアの心はどういう感情だったのか.

僕には一生理解できないかもしれないな.

何かの生命が生まれ,死ぬ.

その一つの区切りを最初から最後まで見ることができたマキア.

それはとても美しい関係性だと思った.

 

エイリアが図らずとも人間との子を生み,それを捨て自分の人生を生きる選択をしたところ,ここは何か大きな衝撃があった.イオルフの民にとって,その出来事というのはヒビオルの小さな綻びや傷であるだけなのだ.長い生命の中のほんの一部であるのだ.

 

何もかもとりあえずでたらめな世界の所為にして生きていこう.

君を失うことも,正しい選択ができなかったかもしれないことも,誰かを傷つけてしまったことも全部.