今更ながら「鹿の王 下」を読んだので
↑「鹿の王 上」のレビュー記事
こんにちは.
結構前に鹿の王読み終わってたのですが,レビューする時間が気力が起きなかったのですが,まとめて時間が取れたので書いときます.
鹿の王
上から下にかけて,物語は急速に展開していきます.
ヴァンとユナが持つ不思議な能力についての謎が明かされます.
彼らの能力を巡って,人々,国々は争いあい,復讐し,互いを傷つけ合います.
各人物のそれぞれの心情やバックグラウンドが,その瞬間をより色濃く描写されていて,その密度に唖然としました.
人の身体ってのは森みたいなもんだ
身体の中には無数の自分の意思と離れた存在が多様に生息し,それらが身体を作り上げています.
調子が悪いとき,自分の身体は自分の意思で「治れ!」と唱えても治りません.自分の身体なのに自分のものではないような感覚に陥ります.
この本では,精神と身体は別のものであり,それは森や国と同じであるとしています.
国には多くの建物や人々,動植物など様々な生き物が生息して,互いに助け合いながら成り立っています.
同じように,人間も様々な細菌や内臓がそれぞれが自分の役割を持って,意思と関係ないところで働き,身体を形成しています.
自分という存在を改めて認識する機会になりました.
生きていくということ
自分一人でさえも,数え切れないほど多くのものに支えられています.
同じように,僕らもたった一人では生きてはいけません.
困ったら支え合い,悲しかったら背中を擦ってもらい,楽しかったら共に笑い,そうやって他人の中にも自分を見つけていき,僕らは成り立っていきます.
他の人とは自分は違う考えかもしれない,というかきっとそうだけど,だから反発するんじゃなくて,それでも共に生きられるように努力しないといけないなと感じました.
上橋菜穂子は,身体と精神の違いと国や森に共通点を見つけ,色鮮やかな文章で描いていきます.