パスワードの人という音楽
実は,ツイッターで告知されるちょっと前に,ぐみμさんから連絡いただいた.
正直言葉が出ない.
パスワードの人には,僕自身特別な想い出があるので,少し振り返りたい.
パスワードの人との出会いは,渋谷aubeというライブハウスでだった.
その頃はまだ3ピースで,よくグレートヒェンとか国王に告ぐとかを演奏していたし,バンドとしての進むべき方向もまだ定まっていなかったな.
パスワードの人は,その対バンの中で群を抜いて異常だった.それは音楽ではなく表現だった.
僕は圧倒されたし,とても嫉妬した.僕の中の少ないと思っていた固定観念が完全に破壊された.
ギターがいない.
ドラムのよてろうさん,キーボードのつっぺさん,そして中央で舞うぐみμさん,くまのぬいぐるみ(熊山くま子).
なんだこれは.
今はその頃何の曲をやっていたのか全く思い出せないけれど,印象深かったことだけはまだきっちり覚えている.
その日は軽く挨拶をするだけだったけれど,とても印象に残っていた.
密かに追っていたので,デザフェスに出演したというツイートを見た時素直に「すごいなー,他のバンドでデザフェスって見ないから,完全にそっちの方向へ行くんだな」と感じたのを覚えている.
大塚HeartsNextで本当に久しぶりに対バンした時に,「【再考】という企画には,絶対にパスワードの人が必要だ」と思って,何も考えずにぐみμさんに出演依頼をした.
快く受けてくれて本当に嬉しかった.
ぐみμさんとは,感性のところで近いものを感じていた.
バンドとして,近い道を歩いていると思っている.だからこそ一緒に頑張りたかった.
きっと見えていた景色はとても近い.
この世界をパスワードの人はあの表現で,僕らはこの表現で表現するしかなかった.
とても険しい道程だ.当たり前だ.
いつだって普通じゃないことは,端に追いやられてしまう.
それでもすり減りながらも,表現するしかなかったんだ.
そんなパスワードの人が休止する.
一度休眠するだけだ,大丈夫.そう思っているけれど,悲しさは止まらないね.
また,僕を守ってくれていた音楽が止まる.
マルメロのときもそうだけど,解散ライブってなると,みんな来るんでしょ,そうだよね,しってる.
それもいいと思う,悪いことじゃない,むしろ良いことだ.
でもね,それでもバンドが息をしていた時に,関わっていたい,僕は.
突然だった.
企画に2回も出てくれて,精算のときに もう嫌というほど「最高だった,最高だった」と伝えても,それでもバンドは休止してしまうんだ.
勝手ながらも,僕らはパスワードの人という音楽を背負っていくつもりでいる.
絶対になくならないし,僕の中にある.
それで,いつかまた「音楽に戻ってきたい」って思ってもらえるよう,この道を照らし続けていくつもりでいる.
「三つ編みの言葉を結っていく」
三つ編みのように,僕らの人生はねじれ交わっていった.
言葉を丁寧に丁寧に,それがたとえ伝わらないと僕らは知っていたとしても,結っていくしか無いのだ.