コンビニ人間はアスペルガー女性の日記だ
こんにちは。ノクターンのjob'sです。
先日のアメトーーク 読書芸人で紹介されていた「コンビニ人間」を読みました。
羊と鋼の森や君の膵臓を食べたいと一緒に書店に並んでいたので前から気になっていたので、これを機に買って読みました。
↑以前書いた本のレビューです.もし良ければ覗いてみてください.励みになります.
1時間半くらいでさっと読める作品になっています.内容もすっと入ってきて,何より描写が鮮明に脳裏に浮かべることが出来て読みやすかったです.読書が苦手な方でもおすすめです.
さて,最近はアスペルガー症候群も一般的になってたりしますよね.
アスペルガー症候群の方は,
- 言われたこと以外のことをする
- 人の気持ちが理解できない
が苦手とされています.
突発的な用事や,普通はわかるであろう付加事項などが予測できなかったり,表情から相手がどのように考えているかが理解できない,といったことです.
さて,この本の主人公(恵子)は前述したとおり,アスペルガー症候群の女性です.小鳥が公園で死んでいたときは,それを持ち帰って焼き鳥にしようと言い,喧嘩を止めようと喧嘩している人をスコップで殴り飛ばしたり,とにかく常人にはかなり理解できない行動をする人です.
(本人はそれが一番効率が良く,なぜそれがいけないことなのかわかっていない)
家族が鶏肉が好きだから,死んだ鳥を焼いて食べればみんな喜ぶ,と思うわけです.普通の人は,「かわいそうだね,お墓を作って埋めてあげよう」というような考えを持つわけです.
喧嘩が起こっていて,止めるために片方の人を関係ない自分がスコップで叩いて行動不能にしてしまうわけです.「喧嘩を止めるのなら,どちらかを動けなくしてしまえばいい」と考えてしまうわけです.確かにその通りだけど,道徳の(人道の)観点から考えると少し突飛なものと思います.
僕が以前テレビで見たものは,「お風呂お湯が溜まっているか見てきて」と言われて,見てくることしかしなくて,お湯が溢れてしまう,なんてものもありました.言われたこと以外の行動が考えられないわけです.
恵子は,周りの道徳的な考え方に協調できず,ただ自分の行動は周りから責められるために静かに過ごすことを決めます.
高校生の途中でコンビニのアルバイトをやることになり,そこからこの「コンビニ人間」は作られていきます.
コンビニの店員は,やることが全て決まっています.自分の役割が100%定められており,その行動に沿って動くことが大事です.
恵子は,笑顔も喋り方も言われたとおりのマニュアル通りにこなしていき褒められます.その瞬間,自分がやっと「社会の歯車」になれたと実感するのでした.
恵子はコンビニ店員の傍ら,「女性」という役職もしていたので,妹(正常)に普通の女性について教えてもらい,周りに合わせて生きていました.そこでどうしても避けられないのが「結婚」です.
30代半ばになって周りの人たちも結婚をしだし,周りに馴染むためにひょんなことからひきこもりニートの白羽と同棲しだします.
この同棲生活も滑稽で,まず恵子自身食事に興味がなく,火を通して食べられるようにしたものを食べて生きているだけ.本当に生きているだけなんです.
白羽にも食事を作りますが,恵子は白羽に食事を与えることを「餌を与える」と表現します.
思考が「美味しいものをたべたい」ではなく「生きるために(恵子の場合はコンビニ店員をやるために)仕方なく食べているだけ」というもの.
恐ろしいですね.滑稽すぎて笑いました.
こういう人間もいるんだな,という風に思いながらこの本を読んでいました.
僕はこれは,「恵子が普通じゃない,ギャハハ」という本ではなく,ただ淡々とアスペルガー女性の日記を読んで,そのような人の理解を深める本だと思いました.
ものすごく盛り上がるわけではないけど,「ふう」と読み終わった後になる本です.